特別展

BORO 美しいぼろ布展〜人間はどれだけ貧しくてもおしゃれをする〜

私が民俗学者、故・田中忠三郎先生と出会ったのは2009年春。青森にある田中先生の倉庫で、先生が50年がかりで調査・収集なさった、庶民の衣類や生活道具、約3万点(!)を見せて頂き、その物量と、ひとつひとつのぼろ布が放つ独特のパワーに圧倒されました。ぼろ布をじっくり見ながら先生の解説を聞いているうちに、ぼろ布そのものも勿論迫力がありますが、その布がどうやって作られたか、どのような思いで使われてきたかという、布を慈しんだ人たちの物語を聞くと、余計にそれらぼろ布に興味がわき、「この忠三郎コレクションと、そのコレクションがもつ背景も含めて展示するミュージアムを作らねば!」と考えたところから、アミューズミュージアムの構想がスタートしました。
「ぼろ布を展示するミュージアム」という少々マニアックな施設ですが、7年も続けているとクチコミで、民俗学や服飾学の研究者の方々はもちろん、ファッションデザイナーやテキスタイルクリエイター、またファッション関係のみならず画家、ミュージシャン、小説家、映画監督などなど、様々なジャンルのアーティストが世界中から来訪なさるミュージアムになってきました。
今やぼろは「BORO」と呼ばれ、世界のアートシーンで通用する言葉になってきました。
BOROを「作為のないデザイン」と評する向きもありますが、私は「ものすごく作為している」と思っています。単に寒さをしのぐだけであれば、1枚の布で継げばよいところを、ちゃんとバランスを考えて、少しでも自分をよく見せられるように、考えて、考えて、考え抜いて、継ぎあてています。

そんなBOROを見ていると、「ファッションの原点」を感じるのです。「ファッション」は、とかく軽く論じられがちです。「外見ばっかり気をつかって」とか「モテ服」とか、「大切なのは中身でしょ!」とか。いやいや、そうではなくて、自分を少しでもよく見せて、異性にアピールして、自分の遺伝子を残していこう、というのは、人間のみならず鳥や動物なども含めた生き物としての本能ではないか?と私は考えます。だから人間は、どんなに貧しい環境でも、少しでも自分をよく見せるために、工夫を凝らして、おしゃれをするのだ、と。

その生き物としての本能に基づいて、継ぎはぎ布にかけられた膨大な手間。限られた資源の再利用(エコロジー)、刺し子の超絶技巧(テクニック)、愛情(エモーション)、経年美(パティーナ)。極めて今日的なテーマを示唆するアートとしてのBORO。
BOROから受ける感動の本質は、見た目の継ぎはぎのレイアウトではなく、生き物としての本能、「生への執念」だと感じるのです。

本展では田中忠三郎コレクション以外に、東京・西国分寺にギャラリー「丘の上Apt」を構えておられる兒嶋俊郎氏が所有されている貴重な民俗衣38点もお借りして展示しています。アーティストであり画廊経営者である兒嶋氏が絵画的観点から収集なさった美しいぼろ布。忠三郎コレクションと合わせて兒嶋コレクションが放つ、粗末なぼろ布に現れた思いがけない美の世界。消費文化の対極のアートをご覧ください。

「布文化と浮世絵の美術館」アミューズミュージアム
館長 辰巳清

※特別展アーカイブが表示されない場合は、各ブラウザで、「ポップアップブロッカー」を無効にしてからご覧いただくか、
こちら
からご覧ください。
page top